ゆるり藤沢/YURURI
湘南素材びすとろ/JAPANESE BISTROjapanese dining カジュアルレストラン
casual restaurant ダイニングレストラン
dining restaurant
photo:石橋マサヒロ
「織り成す波紋空間」
神奈川県で数店舗を展開する山路フード「ゆるり」の新店である。場所は藤沢駅にほど近く、線路からも覗ける好立地。居抜き物件であった事から、できるだけ厨房区画は壊さずにプランニングする事が最善であり、その制約の中でどのように空間に奥行き感を与え、デザインの差別化を図っていくかが課題となった。
新鮮な海の幸を提供する業態の為、生け簀が必要となる。来店後、一気に広がりをみせるメーンダイニングでは、印象付けに生け簀を中心に配置することからプランニングを始め、それを望むように楕円状のブース席を配置していった。そのゾーニング行為が雫を落として広がる「波紋」の様に思え、また海や魚料理にも通づる感もあり、波紋状に派生していく曲線が鬩ぎ合う様な空間構成に展開していく事にした。
まず床は生け簀を中心に円形のパターンで貼り分けた。壁面では多段状のテクスチャーを施し、波文様の和柄生地と濃淡をハッキリさせた木調を重ねる事で、オリジナリティーを持たせている。そしてブース席を上下に連なり、天井の波紋型パネルへと派生していく事で、床、壁、天井と連動的な一体感を生む結果となった。さらにそれらを、ミラーを駆使して連鎖させる事で、曲線空間が続いていくような不思議な奥行きを創り出した。生け簀の上部からは数百個のガラス玉が垂れ下がり、滴り落ちる”雫”を表現している。メーンダイニングを抜けてT字に続く奥はテーブル席、掘り炬燵席、宴会席を設けて多様的なエリアにした。また、外の脇道からも見える店内の壁面には”海図”をテーマに誂えた特注アート生地を額装し、艶やかに演出された空間が通りがかりに垣間見える仕掛けだ。
ひらがな文字で綴った業態名「びすとろ」が示す通り、和の落ち着きと洋の要素が融合した潤沢な空間に仕上がったと思う。美味しい料理に舌鼓を打ちながら、ゆるりと食事を楽しんでいただきたい。
二宮弘大
「ゆるり藤沢」データ
施工/ルーツ株式会社 川村和伸 岩井好治
工事種別/内装のみ 全面改装