CAOCAFE ISHIKAWA
カオカフェイシカワ
Cafe
photo:ナカサ&パートナーズ
街につながるトンネル
「Cafe」はすでに「喫茶店」の翻訳でない新しい業種である。
レストランのような、バーのようなものもあるが、その定義付けを考えるとき、空間の親密度、接客の親密度からなるコミュニケーションということが大きな要因になるような気がしている。
京都の洛中のほとんどの土地がそうであるように、「鰻の寝床」と言われる細長いこの計画地は、昨今の開発から取り残されたように誰にも手を付けられず、ぽっかりと空き地として残っていた。この驚異的に長い敷地(間口3.6m、奥行き37m)の形状を「道」と読み解き、その細長い敷地に筒を横たえたようなトンネル状の建築をつくり、このトンネル建築そのものをカフェ空間にした。
前面道路側と裏庭側に面して開口部があり、内部空間の中央に据えられた木製の箱にインフラを集中させ、その前後にカウンター席とソファ席を設けるシンプルな平面計画をしている。そして、このニュートラルな空間は一本の光のラインでつながれ、より直線的にその空間の細長い形状を印象付けている。また、この空間を貫く床間接照明の直線的な光の強弱に加えて、天窓から差し込む自然光のつくる陰影が、それぞれの時間感覚を持った客のリクエストに応える装置となっている。
「カオ カフェ」の名前の由来である「朝昼晩/三つの顔を持つカフェ」とは、それぞれのイメージを想起でき得る装置としての空間を通して、人が自由にコミュニケーションできる環境であると思う。そのためには、いかにシンプルでニュートラルな抽象的な包容力のある空間が必要である。
「Tunnel」はフランス語で「樽」を意味する「tonne」に由来するといわれている。
このトンネルのようなカフェが、芳醇な酒を熟成させる酒樽のように、さまざまな客の嗜好によってじっくり、ゆっくりと時間をかけて完成されていくことを願っている。 〈辻村久信〉
「カオ カフェ イシカワ」データ
京都府京都市中京区新町西入釜座町31
設計/辻村久信デザイン事務所+ムーンバランス 辻村久信 鳥井雅人
協力/グラフィック 4.5・project 大和俊文
施工/ステッグ・コム 杉山久志 石井邦明
撮影/ナカサ&パートナーズ
工事種別◎一戸建て 新築
用途地域地区◎準防火地域 商業地域 京都市中京区釜座町地区建築協定内
建ぺい率◎制限80%>実効50.01%
容積率◎制限400%>実効46.98%
構造と規模◎木造 平屋建て
敷地面積◎160.92? 建築面積◎80.48?
床面積◎75.6?(うち厨房11.02?)
工期◎2009年1月5日?3月3日
施工協力◎空調・電気設備/有晃電設 給排水衛生設備/梅原設備 厨房・音響設備/ステッグ・コム 家具/icon マルニ木工 什器/森田木工 サイン/工房はんどめいど
屋根◎ガルバリウム鋼板瓦棒葺き
外壁◎ケイカル板二重貼りの上VP 金属サイディング貼り一部モルタルt20の上塗装仕上げ
床◎モルタル金ゴテ押さえ防塵クリアツヤ消し仕上げ
壁◎木軸組みPBt12.5下地免震伸縮ドライウォール工法(ノンクラ工法)の上AEP 壁一部スプルース材縁甲板貼りカウンター足置き/H形鋼素地
天井◎木軸組みPBt9.5下地ノンクラ工法の上AEP
家具◎ムーンバランス マルニ木工
什器◎カウンター/米松無垢板t60ウレタンクリアツヤ消し仕上げ
照明器具◎FL(シームレスライン/ニッポ電機) ユニバーサルダウンライト(ウシオスペックス) 光り床/強化ガラス(ミュゼガラス/Products Office K・O)