朱クリニック
SYU CLINIC
Clinic
hospital, clinic
photo:山田誠良
医療空間デザインの原点
私が初めてクリニックのデザインを手掛けたのが、1999年の「朱クリニック」(00年2月号)でした。ちょうどその前後から、医療の現場にもデザインの必要性が考えられるようになってきたように記憶しています。その後、朱先生とは新たな挑戦を繰り返してきました。これからの医療と空間のあり方について共に考え実行する、いわば戦友のような関係です。朱先生は、その時間の中で、統合医療の第一人者となられ、私もその空間のあり方について究めてきたつもりです。安心して医療の現場に送り出せるアロマセラピストを育成しようと、メディカルアロマセラピーの学校をつくり、また、その卒業生たちが独立開業し、彼らの知識や技術を世の中へと還元していく場をつくりと、毎回内容の濃い医療空間が創出されてきました。
そして10年があっという間に過ぎ、最初に取り組んだ朱クリニックの増床の話が舞い込んできたのです。「ようやく空いたか」というのが私の第一声でした。というのも朱クリニックは、テナントビルの1階に位置しますが、1フロア73坪のうち48坪でもともと開院しており、開院時から、「隣が空いたら増床しよう」という話を朱先生から聞いていました。そのため設計当時の段階から、増床しても患者の動線とスタッフの動線がスムーズに流れるゾーニングを考えていたのです。おかげで今回は、工事のためにクリニックを休むことなく、新旧の空間がつながりました。忙しいクリニックですから、温かで安らぐ空間、という当時のテーマをそのままに、待つことが苦にならないよう「しきり」を用いて柔軟性と心地良さを具現化しました。10年かけて、ようやく朱クリニックの完成です。
「朱クリニック」データ
東京都葛飾区亀有5丁目26-1
設計/岩本勝也+エンバディデザイン 江畑欣忠
協力/照明計画 大光電機 北田正明
施工/スタイル 和田拓裕
撮影/山田誠良
工事種別◎増床 内外装 全面改装
床面積◎80.4?
工期◎2007年12月28日?2008年1月11日
外壁◎木軸組みアルミ複合板下地木目調塩ビシート(サンゲツ、住友3M)パターン貼り
サイン◎スチール切り文字メラミン焼き付け黒塗装+フィックスガラスタペストリーシート貼り
床◎アイアンウッド材フローリング貼り(ニッシンイクス)
幅木◎木幅木染色
壁◎木目調化粧合板(イビデン) セラピールーム壁面/無垢端材(マテリノ材/レーベル クリエーターズ)仕上げ
天井◎AEP
什器:マテリノ材仕上げ